農産物の流通・販売において気を付けるべき法律・規制
1 農産物の流通・販売に関する法律・規制
(1)流通分野について
2020年6月21日、改正卸売市場法が施行されました。
これまで農産物は、産地直接取引や直売所での販売等のルートを除き、次のようなルートをたどって、
我々の食卓に届けられてきました。
出荷者(農協、農家個人等) → 卸売業者 → 仲卸業者/売買参加者(スーパーマーケット等)
→ 小売業者・外食業者等(売買参加者経由の場合は無し) → 消費者、というルートです。
つまり、これまでは、原則として、①卸売業者は、仲卸業者や特定の売買参加者以外への販売が
禁止され、②仲卸業者は、卸売業者以外から買い入れることが禁止されていました。
これが、今回の改正により撤廃され、①卸売業者は、小売業者や消費者に直接販売できるようになり、
②仲卸業者も、農家の方から直接仕入れることができるようになりました。
このため、農家の方は、仲卸業者からの農産物の小口注文でも対応できるようになり、仲卸業者は、
少量ニーズのある業者へ販売できることになったわけです。これにより、農産物の流通は弾力性を増し、
販路の拡大や仕入れコストの低減等を図ることができるようになりました。
(2)販売について
農産物の販売時の表示方法については、食品表示法、食品表示基準、食品衛生法、JAS法、景品表示法、
計量法、健康増進法等に留意する必要があります。ここでは、景品表示法、そして食品表示の基本となる
食品表示基準について、簡単にお伝えします。
2 景品表示法
(1)景品表示法は、商品等の販売における表示に関し、以下の3点を規制しています。
つまり、「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがある
と認められること」 +
①実際の商品の内容より著しく優良であると示すこと等(優良誤認表示)
②価格等の取引条件について、実際のもの又は当該事業者と同種・類似の商品を提供している他の
事業者に係るものよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示等
(有利誤認表示)
③その他誤認されるおそれのある表示
(2)農産物等の販売における表示においては、景表法を踏まえ、以下のようなケースに留意する必要があり
ます。
①優良誤認表示の例:合理的根拠が無いのに、ある農産物を摂取すれば必ずある疾病を予防したり
回復するかのように表示するケース
②有利誤認表示の例:「他社商品の2倍の内容量」と表示していたが、実際には他社と同程度の内
容量であるケース
③その他誤認の例 :告示により指定される6ケース
(3)農産物の販売において、景表法の上記規制を遵守しないと、措置命令(同法7条1項)や同命令違反に
対する罰則等を受けることになるので、注意が必要です。
3 食品表示基準
農産物の販売においては、その表示について、多岐にわたる規制があります。その中で最も基本となるの
が、食品表示法4条1項に基づき定められる食品表示基準です。
同基準は、「食品」を①加工食品、②生鮮食品、③添加物の3つに区分し、「販売者」を④一般消費者
向け食品関連事業者、⑤事業者向け食品関連事業者、⑥食品関連事業者以外の販売者の3つに区分しています。
この3×3の9通りの組み合わせに対応する形で、それぞれ表示内容が定められています。
たとえば、②生鮮食品(加工食品及び添加物以外の食品、同基準2条2号)を、④一般消費者向けに食品
関連事業者(食品の販売をする者)が販売するときは、同基準第三章「生鮮食品」の第一節「食品関連事業者
に係る基準」として第一款「一般用生鮮食品」の第18条~第23条に定める規制に従わねばなりません。
このように、同基準は、対象者と対象食品ごとに規制内容を類型化して定めており、まずは自分がどの類型
に該当するかを判断した上で、規制内容を正確に把握する必要があります。
4 まとめ
農産物の販売においては、留意すべき規制も多く、かつ緻密であるため、日頃から法律等を意識し、法改正
ごとに情報をキャッチアップしていくことが大切になります。(文責:柘植智甫)
*本連載文書は一般的な情報提供のために掲載するものであり、特定の方への法的アドバイスを目的とするものでは
ありません。また、本連載は公開日時点での内容を基に執筆されています。