経営者・法務担当者のためのビジネス法務の勘所

取引先から破産申立の通知が来たら

新型コロナウイルスの流行に伴う外出自粛・休業により、多くの業種に深刻な影響が出ています。今後残念なことに、取引先から「自己破産を申し立てます」旨の通知が突然届くことがあるかもしれません。率直に言えば、御社に一定の損失は避けられない場合が多いと思われますが、できる限り損失を防止するため以下の点にご注意ください。

 

1 取引先に対する支払債務の把握と相殺権の行使
取引先からこのような通知が来たということは、たとえ御社がその取引先に売掛金をもっていても、今後その取引先から売掛金が支払われることはないと考えてください。
他方で、御社がその取引先に対して支払債務を負っている場合には、取引先に対して相殺を主張することができます。この相殺によって、実質的には売掛金の回収が図れる場合もあります。したがって、まずは当該取引先に対する支払債務の有無を確認の上、支払債務があっても実際に支払うのではなく相殺を検討してください。

 

2 納品予定の商品の確認
その取引先に対しては、今後商品を納品したとしても、その売買代金の回収を図ることは困難です。納品予定の商品の有無を確認の上、ある場合にはその送付を中止してください。

 

3 御社の所有物の回収
御社が取引先に対して御社所有の物(例えば金型など)を預けているときには、返還を求めることが可能です。ただし、取引先や第三者の所有物と混同するなどして、所在が分からなくなるおそれもあります。取引先が委任した弁護士へ至急連絡をとり、御社所有の物であることを示す証拠を提示して、返還を受けるようにしてください。

 

4   納品済みの商品の回収について
御社がすでに納品済みの商品については、通常、所有権はすでに取引先へ移転していると考えられ、回収することはできない場合が多いでしょう。
ただし、御社と取引先との契約において、例えば「取引先が代金を支払うまでは当該商品の所有権を御社に留保する」との合意をしている場合などには、未だその商品は御社の所有物となります。この場合、上記3と同様に返還を求めていくことになります。
また、動産の売買に関して言えば、その商品について動産先取特権という権利を行使し、競売を申し立てることが可能な場合もあります。ただし、これについては専門的な事項であるため、その実効性や手続きも含めて弁護士へご相談された方がよいと思われます。

 

5  取引先からの預かり品の有無の確認
取引先から御社が原材料等を預かっている場合、御社は、商事留置権という権利を主張できる場合があります。そして、この商事留置権の効力として、競売を申し立ててその換価代金から弁済を受けることも可能と考えられます。
したがって、まずは取引先からの預かり品の有無を確認の上で、返還する前に弁護士へ相談された方がよいでしょう。(文責:中川真吾)

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