経営者・法務担当者のためのビジネス法務の勘所

初めての契約書チェック

1 今回は、社内異動により、初めて「契約書」というもののリーガルチェックを担当することになった社員の方向けに、どのような点に気を付ければ良いのか、という点について書いてみたいと思います。

 

正直に言えば、このページを見ただけであらゆる契約書のチェックが完全にできるわけではありません(そんなことができれば、私の仕事が無くなってしまいます!)。
そこで、まずは新規の取引先から「これがうちの契約書のひな型です」と渡されたときに、どのようなポイント・視点を持てばよいのかという点を、3つに絞ってお話します。

 

前提として、契約書がもっとも威力を発揮する場面の1つは、取引先と別れる場面です。
取引というのは、ある意味で結婚と似ています。取引開始当初(新婚当初)はうまくいっていても、思わぬ事態が発生して取引を一日でも早く打ち切りたい(離婚)場合もあります。そして、お互いに取引継続にメリットがある場合には、極論を言えば、契約書に書いていなかったとしてもその都度合意することが可能ですが、仲がこじれた後に新たな合意などできるはずがありません。

 

2 したがって、1つ目のポイントは、その取引先と別れる時期に関する条項の内容を確認してください。具体的には
①契約期間に関する条項(契約期間が決まっている取引か、そうでないのか等)
②更新の有無及び内容(契約期間が決まっているのならば、更新があるのか等)
③契約期間の途中でも中途解約ができるのか
などの点です。
後で説明するように、その取引先がきちんと義務を守ってくれない場合には契約を打ち切る(解除する)ことも大切ですが、これは相手ともめる可能性があります。
したがって、一番大切なのは、期間満了などによって円満に別れるための規定がきちんと定まっているのかという点です。
ちなみに、私はリーガルチェックを依頼されたときには、③中途解約条項の有無という点に特に着目し、自分の依頼者にとって③中途解約条項があった方がよいのか、という点を確認しています。

 

3 2つ目のポイントは、義務を守らない取引先との契約を一方的に打ち切るときの条項の内容です。法的には、債務不履行による解除と呼ばれる場面が典型です。
具体的には
①解除の原因としてどのようなことが定められているのか。
②解除する場合の手続きはどうなっているのか。
などの点が挙げられます。
①については、契約上の義務を守らない場面だけではなく、契約相手が破産申立てを行うなど信用不安が生じた場合も規定してあるのが一般的です。また、契約上の義務違反を解除事由とする場合には、なるべく具体的な規定にしておくべきです(例えば、料金の滞納額の合計が〇円に達したときなど)。
②については、解除する前に、契約相手が義務違反を是正するために催促(催告といいます。)しなければならないという規定が定められている場合もあります。

 

4 そして、3つ目のポイントは、契約が終了する場合などに取引先に対して金銭支払が必要とされるか、必要とされる場合にはどのくらいか、という点です。いわゆる損害賠償に関する条項です。
例えば、中途解約条項を定めている場合であっても、一定の違約金支払いが必要とされている場合もあります。また、自分が義務違反をしてしまった場合に備えて、損害賠償額の上限規定を定める場合もあります。

 

5 実際にはチェックポイントはもっと色々ありますが、少なくとも今回説明した3つのポイントを意識するだけでも、ずいぶんと意味のあるリーガルチェックができます。
ぜひ円満な「離婚」ができる契約書を締結してください。
(文責 中川真吾)

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